2016.12.08タイムレスな子供の教育
子供の教育においてICTの導入が世界の潮流
こんにちは。代表の小林です。今回は日本だけではなく、世界の主な国々で実施されているOECDの学習到達度調査について書いてみたいと思います。
PISA (Program for International Student Assessment)
OECD学習到達度調査(PISA2015)の結果が発表されました。PISA(Program for International Student Assessment)は、15歳の生徒に対して一律に試験を行い、評価をしています。日本経済新聞の2016年12月7日の朝刊には社会面と特集面の記事が掲載されています。記事の元になっているのは、国立教育政策研究所が発表しているPISAのWebページです。
http://www.nier.go.jp/kokusai/pisa/
この試験が注目されたのは、新聞などでも多く報道されたのでご記憶されている方も多いでしょうが、2003年のPISA調査で日本の順位が急落したときです。その結果、脱ゆとり教育に舵を切ったきっかけになりました。日経の報道では、理数系で順位が上昇したことを見出しとして報道してますが、私としては違う切り口で見てみたいと思います。
ICTの導入
個人的に注目したのは、この年から回答にコンピュータを使うことになったということです。単に紙の置き換えというだけならそれほど面白いとは思わなかったのですが、そうではなく、コンピュータならではの問題が出題されています。「暑い日のランニング」という問題では、気温あるいは湿度の高い場所において長距離を走るという文脈で、体温調整における科学的な探求をするという趣旨で出題されています。気温、湿度などの条件の中でシミュレーションを行い、ランナーの発汗量、水分喪失、体温をシミュレーションします。その結果を踏まえて設問を解くというものです。自分で内容を理解してシミュレーションをしないと、結果にたどり着けないというところが、紙とは違うコンピュータを使った試験と思います。
国立教育政策研究所の資料「PISA2015年調査問題例」(http://www.nier.go.jp/kokusai/pisa/pdf/2015/05_counter.pdf)より抜粋
このような試験が出題される背景として、ICTは切っても切り離せない現代において、国際的にICTを活用した教育が盛んになってきていることがあります。実際、国立教育政策研究所から出されている資料「読解力の向上に向けた対応策について」の中でも、諸外国と日本との比較においてICTを国語の授業で活用している時間に関する統計調査がありますが、日本は活用している生徒はほぼ0%に近いのに対し、OECD平均(29カ国)は約25%の生徒が週に30分以上活用、最も高いデンマークでは75%以上の生徒が30分以上活用しているということです。今回の試験結果の分析では、読解力などであまり伸びなかった点の一つの原因としてコンピュータによる入力に不慣れであったという分析が出ています。
国立教育政策研究所の資料「読解力の向上に向けた対応策について」(http://www.nier.go.jp/kokusai/pisa/pdf/2015/05_counter.pdf)より抜粋
日本が弱いのは自由記述などの自由度が高い問題
日本が弱いとされているのが、自由記述などの問題です。数学的応用力の試験において、式を導出した理由を説明する部分で正答率が38%。また、コンピュータを活用した試験の一つでもある「持続的な養殖漁業」の問題においては、フィルタを介して繋がった3つの水槽において、水質に影響を与えないようにするには、どこに魚やゴカイ、貝、海藻を配置すると良いか、といった問題が出ています。どこに配置するかはパターンが多く、その正答率が8%と低くなっています。この手の比較的自由度が高い問題を解くのが弱いという結果になっているようです。
国立教育政策研究所の資料「PISA2015年調査問題例」(http://www.nier.go.jp/kokusai/pisa/pdf/2015/05_counter.pdf)より抜粋
私なりの理解では、この手の問題が苦手になる理由としては、自分で考えることがあまりできていないということではないかと考えています。いわゆる学習塾などで問題の解法を解く訓練を頑張って積むことで回答できていても、決まった型から外れた問題が出てくるととたんに手が出なくなります。私が大学で学生を指導していたときにも、決まった答えはないような課題を出し、考えるように促しても何もできずに1ヶ月、2ヶ月と時間を過ごしていく生徒を見てきました。いわゆる計算問題などは特に問題なく解けるのですが、自由度が高い課題が出てくると手も足も出ない。考える経験を多く積んでいることで、未知の問題に対してもチャレンジできるようになるのですが、そういう訓練を積んでいないと考えています。
アクティブラーニング
文科省の対策としては、アクティブラーニングを導入して改善を図るということのようです。アクティブラーニングは、従来の授業を聞いて学習していくスタイルではなく、自ら課題を解決していき学習していくスタイルの学習です。生徒同士で意見を言い合う、学び合うといったことを通じてより深く学習をしていくということです。どの程度そういう形を取り入れるのかは今後の動向を見ていくことになります。
最後に
本教室においてもアクティブラーニングを標榜し、自らの考える力を育てていくことを行っています。自分で考えた内容を動くもので形にしていく経験を多く積むことで、受け身で学んでいくのではなく、自ら掴み取っていけるようになっていただきたいと思っています。いろいろな可能性を自分で試してみて、うまくいくかどうかを試行錯誤する経験が後々に生きてきます。当然、社会に出てからでもそういう経験は積むことができますが、早くからできている人とは当然のごとく差がつきます。ICT教育、プログラミング教育が諸外国で多く採用されていく中、国際的な競争に今後さらされていく子供たちに、良い環境を提供していきたい。日本に限らず世界をリードして活躍できる人材を排出していくことが今の私の夢であり、そのために環境を提供していきたいと考えています。
東京都文京区小石川で小学生、中学生、高校生を対象としたプログラミング&ロボット教室を開校しています。コース概要のページで説明しております。創造性や協調性などこれからの時代に必要となる素養を育てるコースです。ご興味ありましたらぜひお問い合わせください。また、ワークショップも定期的に開催しています。こちらのワークショップのページにて内容をご確認ください。
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